「あら、相談ならいくらでも乗るわよ」
「ウフッ、独身の小町ちゃんには無理ね」
「なぁに、それ」
「まぁまぁ」

小町さん、母、湖陽さん、コントを見ているような三人の会話を第三者目線で見ながら、大きく溜息を付く。

本当……急転直下だ。


 *


あの日……突然現れた湖陽さんは、私を店から連れ出すと有無も言わさず車に乗せた。

長い沈黙が続いた後、痺れを切らせた私が発した言葉は、「国際免許、持っていたんですね」だった。

「まぁね」と湖陽さんはサラリと答え、華麗にハンドルをさばく。その姿があまりにカッコよく、なぜか無性に二発ほど拳固をお見舞いしたい気分になった。

「どこへ行くんですか?」
「決めていない。岬と二人ならどこだっていい」

この男は何を言っているのだろう? 彼を二度見するがふざけた様子はない。

「美希さんがいるのにいいんですか、そんなこと言って」

だから、思い切り嫌味ったらしく言ってやった。でも……。

「それ、誤解だから」

ニヤリと笑う湖陽さん。