私は時間を忘れ、何度も手紙を読み返した。

海ってば、どれだけ心配性なの……。
『舜、岬を頼む』何度もその言葉が書かれていた。

私はしっかり海に愛されていたんだ。
それをこの手紙で確信した。

そして……どれだけ彼が私の幸せを願っていたかも……。

でもね、海。あなたの思い通りにはいかなかったわね。
彼は、私と舜が一緒になることを望んでいたらしい。

おバカな海。舜を友達以上に思ったことなどなかったのに。
何が『幸せにしてやってくれ』だ。私の意思は無視?
海、貴方の願う幸せには程遠いけど、私は今、幸せよ。

ハラハラと溢れる涙は、今までとは違い、私の心を温かく穏やかにしていく。
凪いだ湖面のように……。

湖陽さんのことを思うとまだ胸が痛むが……それも時間が解決してくれるだろう。舜との出会いがそれを裏付ける。

これで心置きなく旅立てる。

背筋を伸ばし、立ち上がり、レジの前にいたウエイトレスに「ご馳走様……ありがとう」と声を掛けて店を出る。

日が翳り冷え込んだ外気が私を襲うが、温もった心が私を守ってくれる。そんな私の目にクリスマス仕様のイルミネーションが映る。

幸せはこんな所にもある。自然と上がる口角をそのままに、私は前へと歩み出した。