それは、ご利益テレビが撮ったものではなく、明らかに盗撮された写真だった。
少しピンボケしているが、知った人が見たら私だと分かる。そんな写真だった。

誰が、という怒りと、どうしよう、の思いが混濁する。

過去から逃げてきたといっても、誰も探してはいないだろうが……穏やかな日々に、小さな波風も立てたくない。

「もしもし、湖陽さん」

電話は苦手で私から彼に一度も掛けたことがなかった。

〈おっ、珍しいね〉

嬉しそうな声が耳元で聞こえ、要件も忘れ私の顔も綻ぶ。

「お店、大賑わいみたいですね」
〈みたいじゃなく、お祭り騒ぎだよ、まったく!〉
「大繁盛じゃないですか」
〈まぁね、今のうちに儲けさせて貰うよ、こんなのは一過性のものだからね〉

一過性……ということは、放っておいても大丈夫だろうか……?

〈どうしたの? こんな世間話をするために意を決して電話してきたんじゃないだろ?〉

よくお分かりで、と心の中で舌を巻く。

「えっとですね、私の顔写真が盗撮されて出ちゃっているんです」
〈えっ! それどこ、アドレス言って〉

電話の向こうから、カチャカチャとキーを叩く音が聞こえる。パソコンを操作しているのだろう。