「そこのバッグの中に入ってるから、勝手に取っていいよ」

「ありがとう……ついでに教科書も借りていい?」

「お好きにどうぞ」


足元に置かれた篠宮くんの荷物の中から、古典と教科書を見つけるとそれを手に取った。


えっと枕草子……枕草子っと……

ペラペラと古典の教科書を捲り、目的のページを探しながらあることに気付いた。


教科書のあちらこちらに、付箋が貼ってあったりマーカーペンが引かれていて、教科書はほとんどヨレヨレ。

自分の綺麗な教科書とは比べ物にならない。


「篠宮くんって予習とか復習とかする人?」

「まあ人並み程度に」


頭のいい人は勉強しなくてもいい成績が取れる、なんて間違っていた。

日頃からの努力の賜物なんだ……。


「ボケっとしてていいの?早く進めないと、いくら経っても帰れなくなるよ?」

「それは嫌だ!」


分からない単語を古典で必死に引き、端のスペースにメモしていく。

そして最後まで訳し終わった時、既に始まりから30分が経過していた。