「えっ、そうだっけ?!」


うっわ、恥ずかしい……


「今、結構自信あったでしょ」


恥ずかしさで肩を竦(すく)めると、からかうように彼はそう言った。


「そ、そんなことっ」

「“つれづれなるまゝに、日暮らし硯に向ひて――…」


篠宮くんは突然、落ち着いた声で古文を詠み始める。


「――――口をしかるべけれ――”……、これが授業で習った部分の徒然草」


まるで歌人のように綺麗に徒然草を詠み上げた彼に、思わず聞き入ってしまっていた。


「す……凄いっ……何で暗記出来るの?」


「何回も目を通していれば自然と頭に入る」


やっぱり優等生は頭のつくりが違うな……。


「ほら、感心してる暇があるならさっさと問題解きなよ」

「あ、うん」


机に向かい、目の前の清少納言とにらみ合う。


「……あの……さ、古典貸してもらえる?」


数分程問題に苦戦したところで、ようやく古典の存在を思い出したのだ。