「……あ、あのっ」


机に向かって勉強していた彼が顔をあげる。


「ああ、やっと来た」


待ちくたびれたように小さく溜息吐くと、篠宮くんは持っていたシャーペンをノートの上に置いた。


「ごめん」

と謝り、彼の向かいに腰掛ける。

すると篠宮くんは自分の隣りの席を指差した。


「何でそこ?高城さんの席はここだから」

「へ?」


顔をキョトンとさせ、阿保みたいな返事をすると彼はフッと笑った。


「勉強見るなら向かい合わせよりも隣りの方が教えやすいんだけど」

「……そっ、そっか」


言われた通り、篠宮くんの隣りの席に座り直す。


「じゃあ、早速始めようか。苦手分野は?」

「えっと……」


苦手分野はどれかと訊かれても、得意分野なんてないのだ。


どの成績もギリギリか赤点。

その頭の悪さは、自分でさえも呆れてしまうほどだ。