「……何?」


私の視線に気付いた篠宮くんがこちらを向く。


「別に何もないけど」


――何で、篠宮くんにドキドキしてんの?!

と、自分自身に戸惑う。


「高城さんってさ、」

「……え?」


篠宮くんがゆっくりと近づいてくると、そっと私の髪に触れた。


「……っ、何すんの!」

「あ、ごめん。嫌だったよね?」


反射的にその手を払いのけた私に、篠宮くんはそう言う。

――違う。

触れられたのが嫌だったんじゃない。

このドキドキが髪から伝わってしまうんじゃないかっていう気持ちからだった。