スタディ・ベイビー

「俺、5月生まれなんだよね。だからとっくに過ぎてる」

「あ……そうなんだ……それじゃあ、もう――…」

「それでいいよ?」


“意味ない”

そう言おうとした時に彼が指差したのは、昨日愛美から貰ったストラップだった。


「何でこれなの?」

「それってさ、ペア物ってやつだろ?」

「……何で知ってんの」

「俺の弟が、彼女とお揃いで同じ奴持ってるから」


篠宮くんはそう言って教室の奥まで向かうと、閉め切った窓を開けた。


「ペアだって分かってんのに、何で欲しいわけ?」

「ずっと付けてたやつが壊れちゃったからさ、ちょうどいいなーって。どうせ一緒に付ける相手がいなくて使ってないんだろ?」

と、さり気なく嫌味を言われる。


「ペアだと思わなきゃいい話じゃない?」

「そんなに欲しいなら、明日持ってくるよ。本当にそんな物でいいわけ?私はちゃんとした物を貰ってんのに……」

「いいよ、全然」


優しく微笑んだ後、窓の外を見つめた篠宮くんの柔らかな髪が風に揺れ、少し長めの前髪が彼の右目を一瞬隠す。


「……ッ」


不覚にも、その姿に心臓が跳ね上がってしまった。