スタディ・ベイビー

「何?」


ワザワザ追いかけてくるなんて、馬鹿じゃないの?


「何って用があったのはそっちでしょ」

「別に用ってほどのものじゃ――…ちょっと、こっち来て」


自分たちが注目の的であることに気付き、彼の手を引いて使われていない空き教室へとやって来る。


「アンタにお礼を言いたかっただけ」

「礼?」

「今朝のアレ、ありがとう。嬉しかった」


お礼を言われるとは思わなかったのか、篠宮くんは顎に手を当てて笑った。


「へえ、意外だな」

「友達にちゃんと言えって言われたからだからね」


こんなことを言っても、どうせ素直じゃない私をお見通しなんだろう……。

だって“嬉しかった”という言葉は、確かに本心だったからだ。


「……あのさ、アンタの誕生日っていつ?貰いっ放しは嫌だから、私もちゃんと返す」


すると篠宮くんは、ボソッとひと言“残念”と呟いた。