スタディ・ベイビー

「はあ……」


SHRが終わり、里乃に言われた通りお礼を言う為に、自分のクラスを出た。

里乃が廊下からずっとこっちを見張っているせいで、逃げることも出来ない。


「篠宮環いる?」


ブツブツと文句を言いながらA組の教室までやって来ると、ドア付近に立っていたA組らしき男子に声を掛けた。


「環ならあそこ」

「……何、あれ?」


男子が送った視線の先に目を向けるなり、まるで餌に集る蟻みたいに、篠宮環を取り囲んでいる女子たちに呆然とする。


「あんなの普通だよ。今日はいつもより少ない方じゃね?」


“今日は”ってことはこれが毎日?!


「それよか、環に用あるなら俺が連れ来てやろうか?」

「えっと、じゃあ、お願いします」

「はいよー」


そう言った彼の瞳に宿った不敵な光を見た私は“やっぱりいい!”とストップをかけようとしたけれど、時すでに遅し。


「おーい、環!高城さんが呼んでるぞ」


彼の声にクラス中の視線が一斉にこちらに向けられた。

これは“連れてくる”じゃなくて“呼ぶ”の間違いだ。


「環を呼ぶにはこれが一番」


そう言ってニヤニヤと笑った彼を、思い切り張り倒したくなった。