スタディ・ベイビー

「――だって“嬉しい”って顔してるじゃん」


言葉の意味が分からず、目をキョトンとさせる私に篠宮くんが言う。


「そ……そんなことっ!」

「高城さんって、意外と単純?」

「なっ!」

「感情が表情に出やすいんだね」


今にも噴き出しそうな笑いを必死に堪えながら、篠宮くんは自分の胸元の袋を突き返した。


「人の好意は有難く受け取るべきだよ。……それに高城さんの為に用意したんだから、返されても俺が困る」

「で、でもっ」

「早くしないと遅刻」


ズボンのポケットに手を突っ込み、携帯で時間を確かめると彼は先に曲がり角を曲がって行った。


……一体何なのよっ。

突き返されてしまった紙袋を、ギュッと抱きかかえながら呆気に取られる。

“嬉しい”って顔してるじゃんと篠宮くんに言われた時はビックリした。

わざわざ家の前で待ち伏せしてまで、プレゼントを渡してくれた彼の気持ちが凄く嬉しいと感じていたからだ。

今まで付き合ってきた男はみんな、言葉とは裏腹な私の本当の気持ちに気付かなかったっていうのに……

人の心を簡単に見透かし、反応を楽しんでいるかのような余裕を見せる。


「悔しい……」

そう嘆きながら学校へと向かった。