リビングに向かうと、仕事から帰って来たばかりのお父さんがスーツ姿のまま立っていた。


「何だ、寝てたのか?」

「うん、お帰り」


眠たそうな私の顔を見ながら聞いたお父さんにそう答え、自分の椅子に腰を降ろす。

お父さんは隣りの部屋で着替えを済まし、食卓につく。


「今日は千咲の大好きな海老フライにしてみました」

といつも以上に明るいお母さんの声。


美味しそうな匂いに、お腹が小さく“きゅ~”と鳴る。

それを聞いたお母さんが微笑みながら、真ん中に置かれたホールケーキのロウソクに火を点けた。

部屋の電気が消され、

3人がバースデーソングを歌う。


それを聞きながら、灯されたロウソクの火を見つめていた。


彼氏と別れて最悪な誕生日だと思っていたけど、こうやって家族が祝ってくれるだけでも十分幸せなこと。

枢からもメール貰ったし、何だかんだでこれで良かったんだとも思う。

別れたぐらいで落ち込んでても時間の無駄!

時間が経ったら、また恋をすれば――…



“一生彼氏出来ないよ”

何故か篠宮環の言葉がふと頭を過ぎる。