愛美は私の隣りに腰かけ、机の上のカゴから飴を一つ手に取った。


「それよりお姉ちゃん、今日は帰り遅くなるんじゃなかったの?」

と袋を開けて飴を口の中に放り投げる。


「予定なくなったの」


すると愛美がニヤリと笑って


「なーんだ、彼氏に振られたのか」

「あらまあ、そうなの?千咲」


台所で聞き耳を立てていたお母さんが、水道手前に置かれた鏡越しに私を見た。


「振られたんじゃなくて振ったの!」


何で里乃も枢も愛美も、私が“振られた”ってことを前提に話すのよ。


「お姉ちゃんって、どうしてそう長続きしないわけ?前の男とも結局浮気が原因で別れたよね?」

「余計なことは言わなくていいから!」

「男が浮気しちゃう理由も分からなくないなー。だってお姉ちゃん、素直に甘えられなくて傍から見たら全然可愛くないもん」

「うるさいっ」


可愛くないことだって素直じゃないことだって、言われなくても分かってるし!