「高城さん」


彼女が居なくなると、それまで黙っていた篠宮くんが口を開いた。


「さっきのなんだけど……」


“好きじゃない”


「ああ、あれ?全然気にしてないから!」


あはは、と作り笑いを浮かべながら顔の前で左右に手を振る。


気にしてないなんて嘘だ。

本当は相当なダメージを受けている。


これ以上、何も聞きたくない。


「あれは――…」

「そんなことより、これ持ってきたからチェックして!」


何かを言おうとした彼の言葉を強引に遮り、問題用紙を胸に突き付けた。


「さっきのは聞かなかったことにするし知らないことにするからもうやめよっ!」


彼に背を向けると、小さな溜息が聞えてきた。


「……分かったよ。じゃあ、これ確認するから待ってて」


椅子を引き、問題用紙に目を落とす。

シュッ、っと紙の上をペンが走る音が響く。