「――――好きじゃない」


張りつめた空気の中、

その言葉だけが静かに響いた。


今のは聞かなかったことにして、耳を塞ぎたくなった。


想いを伝える前に、

こんな形で篠宮くんの気持ちを知るなんて……


胸がギュッと締めつけられて痛い。


「そうやってまた環は――…」


“ガタッ”


「――――ッ!」


こっそり図書室を抜け出そうとした時、不注意でカウンターの椅子に足を引っかけてしまい、大きな音が立ってしまった。


「誰?」


鮫島さんが“出てきなさい”と言わんばかりに声を張り上げる。

私は仕方なく、潜めていた体を起こしてカウンターの外へと歩き出た。