「千咲さん、浮かない顔してどうかしました?」

「何で?」


どうして浮かない顔なんて分かるんだろう?

そんなに顔に出てる……?


「もしかして兄貴と何かあったとか?」


そう聞かれて何も答えずにいると、


「……場所、変えましょうか」


唯くんは友達にひと声かけて滑り台から少し離れた場所にあるブランコへと向かって歩き出した。


“帰る”と言うタイミングを失い、私は黙って彼の後をついて行く。


「俺、こう見えて結構勘が鋭いんすよ」


ブランコに座り、ゆっくりとそれを揺らし始める。


「千咲さんって兄貴のこと、好きなんですか?」

「へっ?!何言って……」

「何とも思ってない相手と喧嘩したなら、そんな切なそうな顔なんかしないですもん」


“少なくとも、俺はですけどね”と言葉を付け加えて、揺らしたブランコを一旦止める。