「……あ、来た」


図書室のドアを開けた私に、篠宮くんが呟くようにそう言う。


「昼休みのことがあったから来ないかと思ったよ」

「……っ、それとこれは別だから!」


そう言ってドアを閉めると、篠宮くんの隣りに腰をおろした。


「ん」


手をヒラヒラさせて、何かを催促する篠宮くん。


「“ん”じゃなくてちゃんと言葉で言いなさいよ」


バッグから課題のプリントを取り出すと、それを彼に渡した。


「うわ……すっご……」

「全部は無理だったけど、出来るところまではやったよ」


「これ、本当に全部自分でやったの?」

と半信半疑の態度でやってきた課題をパラパラと確認しながら驚く。


「当然でしょ?自力でやったよ」


参考書を机に置くと、鼻高々に自慢げになった。


「……うん、そうみたいだね」

「え、何?」

「慣れないことしてまでこんなに真面目にやってくるとは予想外だった」


篠宮くんは突然、私の頭に手を乗せるとポンポンと軽く頭を叩いた。