「だったらここの解き方教えてくれない?」

「教えるのとか上手くないから無理」


――つまり、めんどくさいのね?


「……あ、そろそろ二限始まるじゃん」


教室の時計を見て席を立ち上がり、女子トイレに向かうと。

“いけ好かない”彼女が、友達と一緒に鏡の前で化粧直しをしていた。


知らん顔してトイレに入ろうとしたが、鏡越しに彼女と目があって思わず足が止まる。


「……あら、あなた」


彼女は持っていたグロスの蓋を閉めてこちらを振り返った。


「どうも。えっと……鯖島(サバシマ)さん?」

「失礼ね!鮫島よ、サメジマ!」

「あ、ごめんなさい。人の名前覚えるの苦手だもんで」


――なんてね。


「まあ、そんなことはどうでもいいわ。それより、あなたの噂って本当だったのね」

「は?何のこと?」


彼女は全て片すとポーチのファスナーを閉めて、ニコッと微笑んだ。


「環の次は柳隆臣って、どういう神経してるのかってことよ!」


そう言って私の肩をグイッと後ろに押す。

この人にまで知れ渡っているのか、めんどくさいことになったな……。