「それ、今日の放課後に提出するようにだって」


提出?

そう言われてファイルの中を確認すると、中には何科目もの問題用紙が大量にファイリングされていた。


「えっ、これって」


それらから目を離して篠宮くんの顔を見上げると、不適な笑みを浮かべていたのだ。


「じゃあ、そういうことだから。 ……頑張ってね」


用件を済ませた彼が居なくなると、溜め息を漏らした。


“先生からの預かり物”だなんて嘘ばっかり!


それは、間違いなく篠宮くんが用意した試験対策のプリントだった。


昨日彼に教わった古文の問題が、丸っきり同じように出されていたから、すぐに気付いたのだ。

きっとあの場で嘘吐いたのは、騒ぎにならないようにという彼なりの気遣いなんだろう。

そこは優しいと認めるが、この課題についてはイジメのレベルでは?


「千咲、凄い量だねそれ」

「放課後までにやれとか無謀すぎだし!」


机の上に投げつけたそれは激しい音を立てた。


「まあまあ、ひとまずやれるところまでやればいいじゃん」


……ほんっと、どこまでもムカつく男だ!