スタディ・ベイビー

「意味分かんないし!」


回避しようと首を傾けた時、ハッとした。

それに気付いた隆臣が同じ方向へと顔を向けるとそこに立っていた人物に“あっ”と小さな声をあげた。


一瞬だけ隆臣の力が緩まった隙をついて、体を押し離す。


「えっと……いや、これは……」

「千咲先輩ってこの前の保健室といい今回といい、やっぱり大胆ですよね」


どう弁解したらいいのかあたふたする私を見て、彼女は恥ずかしそうにそう言った。


「大胆って……」


別に好きでこういう状況を作ったわけじゃない。


「あっ、お邪魔してごめんなさい!邪魔者は消えますね」


彼女はニヤつきながらその場から走り去って行った。


「こんのぉ阿保隆臣っ!またあの後輩に見られたじゃんか!変な噂が流れたらアンタのせいだからね!」

「俺はむしろラッキーだけど」

「~~っ、少しは反省しろっ!」



不機嫌なまま階段を上っていくと、私を待ち構えていたかのように、教室の前で里乃がつっ立っていた。