――翌日の朝、


「いってきまーす」


前日なかなか寝付けず、寝ついたのは朝方。

お陰で目が覚めた時には、既に登校時間を過ぎていた。


今から慌てて言ったところで遅刻には変わりない。

だからはのんびりと、学校までの道のりを歩いていた。


「……ん?」


家から少し離れた場所までやってきた時、学ランを着た男子中学生が気だるそうに歩いている姿を目にする。


(あの子も遅刻か……)

と何気なく見ていると、視線に気付いたのか彼が振り返った。


あれ?

この子……、何処かで見たような――…


「誰かと思ったら、千咲さんだ」

「だっ誰ですか?!」


見ず知らずの彼に突然名前を呼ばれ、驚きながらも返事を返すと目の前の彼が

「初めまして、篠宮唯です」

と穏やかな表情で笑った。