呼び慣れていないそれに“ドキッ”と波打つ心臓。


「えっ……な、なにっ?」


その場に立ち止まり、返事を返す。

その声は、あからさまに動揺しているのがバレバレ。

篠宮くんはそんな私を見つめながら、またしても溜息を一つ漏らした。


「――…って呼ばれてんだね」

「あっ、うんっ」


別に名前を呼ばれたわけじゃなかったみたいだ。


「前から知り合い?」

「全然!初対面からあんな感じだよ。別にこれと言って全く接点は無かったけど、何で?」

「……別に。ただ妙に親しいから何となく聞いてみただけ。だから気にしないで」


そう言って、再び歩き出す。

“気にしないで”と言われると、余計気になっちゃうんだけどなあ……


「――それじゃあ、また明日」


篠宮くんは私を家まで送り届けると、そのまま真っ直ぐにその先を進んでいった。