篠宮くんはしばらくの間沈黙を続けたが、


「……そんなこと、アンタに教える必要はない」

と否定も肯定もせず、曖昧のまま口を閉じた。


「ふうん……まあいいや。言っとくけど、俺は千咲に惚れてるから」


そうハッキリ告げると、隆臣は塞いでいた手を離した。


「じゃあ、千咲。俺は友達待たせてっからもう帰るな。……気ぃつけて帰れよ」


ニッコリ笑みを浮かべると一人、先に立ち去って行った。


「……いつまでもここに突っ立ってたら風邪引く」


篠宮くんは小さくなっていく隆臣の背中から目を逸らし、反対方向へと歩き出す。


“はあ”と彼が漏らす溜息が、何度も何度も聞こえてくる。


“それは何の溜息?”

“本当は私のことどう思ってる?”


聞きたい言葉は喉元まで出かかっているのに、それを聞いたところでどうするの?と押し止める。

そんなことをずっと考えながら俯いていると。



「千咲」


えっ?

篠宮くんが突然、そう呼んだ。