「おい、お前ら。こんな時間まで何してんだ」


隆臣の声を聞きつけたのか、見回りをしていた担当の教師が持っていた懐中電灯をこちらに照らす。


「やっべっ、逃げんぞ!」


私の手を掴んで走り出す隆臣。


「篠宮も走れ~」


私たちは下駄箱から走り出し、正門まで全力疾走した。



「よし、ここまで来れば大丈夫だろ」


隆臣は後ろを振り返り、正門から少し出た道路で立ち止まる。


「“大丈夫”じゃない!別に悪いことしてるわけじゃないんだから、逃げる必要なかったでしょ?!」

「……あ、そっか。ついいつものクセが出ちまった」

「いつものクセって……どんだけ悪さしてんのよ?それにしても隆臣、足速すぎ……」

「俺、運動だけはガキの頃からすげー得意で、運動会とかの選抜リレーの常連だからな」

「へえ……そうなんだ……。てかあたしのことも考えて少しは手加減しなさいよね」

「逃げる時はんなこと言ってらんねーっての!」


両膝に手を付いて、乱れる息を整えながら、静かに深呼吸する。



「――あのさ、」