振り返った先に立っていた彼の顔を見上げる。


「アンタこそ何してんのよ?」


黒Tシャツに濃い目のブルージーンズというラフな私服スタイルで、片手をポケットに突っこむ隆臣の姿。


「何って今日友達に返さなきゃならんモノを取りに来たんだよ」

と手に持っていた少年漫画を顔の前に出した。


「それをワザワザ?」

「ん。他の友達に貸す約束があるみたいで急ぎだったからな。この学校ってこの時間でも空いてんだな?」


そう笑いながら隆臣は脱ぎ捨てていたスニーカーに足を通した。


「……で?千咲は?」

「えっと――…」


答えようとした時、先に靴を履き終えていた篠宮くんがD組の靴箱前までやってきた。


「彼と図書室で勉強してたの」

「アンタ、名前は?」


恐らく初対面であろう彼に対して、挨拶も無くいきなり名前を聞く隆臣。


「篠宮環だけど……」


そんな隆臣に対して篠宮くんは自分の名前を言った。