「千歳、それで千歳はどうする気?オレは鳴海に千歳を取られるのは、すごく嫌なんだけど」

「え?」

千歳に一瞬、動揺が走る。

「いや、むしろ千歳に鳴海を取られる方が嫌かも…?」

バシッと千歳が花園の頭を叩いた。

「さーさー部外者は出て行って下さーい、準備前ですからねーついでに二度と来ないで下さいねー」

千歳は背を向けて花園を無視すると、開店準備をはじめた。すると、

「…千歳…オレと結婚しない?」

ほっておかれた花園がポツリと、でもやけに真剣な顔で千歳に言った。

「…明美ちゃんはどうするの?」

すごみをきかした千歳が、ふり向きざまに尋ねた。

「あ…忘れてた」

花園は我に返ったように、ポンと手を打つ。

「冗談は休み休み言え!鳴海、塩!外そうじ終わったら塩まいといて」

そう言うと、千歳はカウンターに塩の入れ物を勢いよく置いた。

「分かりましたマスター」

鳴海は、ひょうひょうとした表情で塩の入れ物を手に取ると、花園の腕をつかんで外へ連れ出した。

「花園…今日はもうここに来ない方がいいと思うよ。ヒマなら生島さんのところ今日、陶芸教室やってるから行ってみれば?」

「うん…鳴海ありがとう…オレちょっと混乱してるみたい…頭冷やすわ…」

そう言って花園は、とぼとぼと歩いて行ってしまった。