「千歳、鳴海に口説かれたって本当?!」

数日後…照明もまだ付いていない開店前の店に、ドアベルをけたたましく鳴らしながら花園が飛び込んで来た。

「…はぁ?」

まだ頭が回っていない千歳は、カウンター内のイスに腰かけてボーッとしている所だった。

「あれ…?どうして花園がここにいるの?確か来週から海外公演で日本を離れるから、それまでの休みは彼女と過ごすとか言ってなかったっけ?」

「そんな事より、それ本当の話!?」

店に入って来た花園は、カウンター越しの千歳につかみかからんばかりの勢いだ。

「あ…えっと、うん」

千歳が目線を花園からはずすと、その先に鳴海が微笑しながら、入口からこちらを見ているのが目に入った。

「…鳴海…これに何吹き込んでくれたわけ?」

「いえ、別に?ありのまま?」

「な〜る〜み〜!」

いるはずのない花園が朝っぱらからいる理由を理解して、千歳は一気に目が覚めた。