告白の時間

「さぁ、行きましょうか…」

榊さんに連れられ店の中へ入って行くと、通された席には一人の先客が座っていた。
真っ赤なロングドレスをまとい、髪はゆるやかにアップされた美しい女性で、自分を切れ長の目が見上げた。

「綾子さん…?がどうしてここに?」

後ろをふり返ると榊さんが立ち去ろうとしている所だった。

「私は社に用があるので、そちらの女性にお相手をお願いしました。だます感じになってすみません!」

早口に一気に言うと、一礼して店を出て行ってしまった。

「えぇ…」

「…お久しぶり、どうぞおかけになったら?」

ちょっと事態を飲み込めず立ち尽くしていると、綾子さんが席をすすめた。

「ご無沙汰をしています…これは一体どういう事ですか?」

オーダーはすでに榊さんによってチョイスされており、会計まで済んでいるという用意周到ぶりだった。
ワインが注がれ、ボーイがさがるのを見届けてから、綾子さんはやっと口を開いた。

「…榊さんにムリを言って、この場をセッティングして頂きました」

「そうでしたか…」

乾杯をするのも変なので、勝手に高級ワインを飲ませてもらう。