「いいえ、もういいんですよ、頭を上げて下さい。自分もまさか、そんな事になってるとは思わなくて…驚きましたけど」

「あの時は綾子さん、毎日のように社の方にいらしていたんですよ、一途で…脅されたり、すかされたり、色じかけとまぁ手を変え品を変え…あなたの居場所を聞き出すまで、取りついてやるとまで言われて…」

思い出したのか汗が出ている…

「そうでしたか。こちらこそすみませんでした…ところで榊さんいくつになられましたか?」

「はい?今年で46になりますが?」

「そうですか…綾子さんとは、その後どうなりましたか?」

「そんな、何もないですよ。時々…食事に行く事はありますが本当、時々ですから…」

先程よりも汗が増量している気がする。

「お似合いだと思いますよ?」

「とんでもない!私などとても…」

「そうですか?」

「はい、そんな事より午後はどうしますか?」

「あ、そうですね、現場の視察とかさせてもらえると嬉しいんですけど」

「分かりました、では私がお供します」

「いえいえそれは…どなたか手のあいている方でいいですよ」

「いやいや、静時君を紹介するのに私ほど適任はいないと思いますよ。ちょっとしたパニックは覚悟しておいて下さいね?」

「そうですね、ではお願いします」