「さぁ、では異議がないようなので会議を始めましょうか」

ほっとした榊さんの一言で、会議が始まった。
現在置かれている問題点を専門部署の責任者が報告し、検討へと移って行く。妙な感想だけど、この張りつめた空気が懐かしいと思ってしまう…

会議は暗礁に乗り上げ、指針さえ見えず泥沼化して行く…ある程度アイデアも出尽くした所で榊さんが、自分に意見を求めてきた。

「コンサルタントの視点で何か意見はありませんか?」

「…まだ検討材料が不足してるので何とも言えませんが、いくつか気になる点が…」

そう言って、一つ一つ指摘して行く…解決には程遠いいながら、ほんの少しの光明がその場に指し込んだ気がする。

「…では、今日の会議はこの辺りで終わりにしましょう」

ムダに消耗する長引く会議にはならず、お昼前には切り上げる事が出来た。
何人かの重役が部屋を退出する前に、自分の元へ来て声をかけてくれた。

「ご無沙汰をしています。君は相変わらず人が悪い…」

「ご無沙汰をしています、鈴木さん…お元気そうで何よりです」

「いっそ、専属顧問になったらどうですか?歓迎するよ」

「伊原さん…ありがとうございます。検討してみます」

息子ほどの年齢の自分に、快く言葉をかけてくれる。