「社長、ご無沙汰をしています。遠くからご足労ありがとうございます」

秘書の女性に通され、社長室を訪れると開口一番、勢い良く榊さんがイスから立ち上がって言った。

「ご無沙汰をしています。社長は榊さんですよ?」

昔のクセが抜けないらしく、いまだに自分の事を社長と呼んでしまうらしい。

「今回はその…本当に申し訳ありません。静時君の手をわずらわせるつもりは、なかったのですが…」

ペコペコと音がしそうなほど榊さんは、平身低頭している。

「いえいえ、こちらこそ榊さんには苦労をかけてしまって申し訳ないと思っています。今の自分があるのは榊さんのお陰ですから…とても感謝しています」

榊さんは感極まったという感じで、目が潤んでいる。

「社長…!」

重厚な机をはさんで向かい合っていた所に、先程の秘書の女性がノックをして入って来た。

「社長…会議の準備が整いましたので、第一会議室にいらして頂けますか?」

「分かりました…では行きましょうか、静時君」

「はい…」