「本当?じゃあ、今度生まれ変わる機会があったら飲まない事にするよ」

「うん、でもみんなすごくのどがかわいちゃって、のんでしまうんだけど…私はのまなかったの…」

「じゃあ、さつきちゃんは…前世の記憶があるって事?」

さつきは小さくうなずいた。

「それはすごいね…」

「思い出したのは、ついさいきんで…今日は前世の知り合いに会いに来てみた」

「…自分?」

さすがにちょっと驚いて、飲んでいたコーヒーをこぼしそうになる。

「そう、鳴海静時…高校の時に一度だけ会ってる」

「…まさか、ひょっとして日下部ときわ…君?」

さつきは今度は、ゆっくりとうなずいた。

「あの後…雪村さえが千歳に帰ったのを見届けて、すぐに転生のサイクルに入った」

「そっか-」

鳴海は当時の事を思い出して、感傷的になる。

千歳の前世、雪村さえが死亡する事故を起こしてしまった人物が、日下部ときわだった…まだ二十歳そこそこの青年もその事故で一緒に亡くなっている。当時の新聞から、その名前を調べた事があり、すぐに名前を言う事が出来た。

「…で、その日下部君が、どうしてまた前世の記憶をひっさげて、ここに?」

「…実は、あの世に行って分かったんだが、千歳の運命の軌道が、雪村が帰った時点で修正されなかった事が分かった…」

「え?ダメだったの?」