気づかぬふりをして、アールグレイをリクエストする。温かいお茶が体にしみわたっていく。

「返事だったっけ…?」

千歳が一息ついたあと、先に口を開いた。

「結婚は出来ないよ…答えはNOです」

自分は視線を上げる事も出来ず、その言葉をかみしめた。安堵とも、落胆ともつかぬ感情が胸に広がっていく…

「…そっ…かぁ~」

やけにゆっくりとした返事を返す。

「でも、ありがとう…花園、私は大丈夫だから…」

″大丈夫″と言う言葉に、反射的に千歳を見上げた。

その言葉の意図する事は一つしかない…千歳には見抜かれていたのだ。
いつから…?分かっていたのに何で今まで、ずっと黙っていたの?

自分の意思を無視して、涙がこぼれそうになる…

「もう…いいから」

″もういいから、自分を責めないで…″と聞こえる。

見抜かれていたのは自責の念…わざと気持ちに気づかないフリをして、中ブラリにして、千歳の事を自分にぬい止めていた罪への意識…

千歳の温かい腕が回され、抱きしめられてしまった。

「…ごめん千歳、オレは千歳にヒドイ事をした…」

言葉にすると、感情があふれ出してしまう。ずっと…本当はずっと謝ってしまいたかった。人の気持ちに気づかないフリをするのは、けっこう自分をむしばんでいくものだから…