「あ、いや、その…え〜っと、すみませんでした」

花園はオロオロとして、うなだれると素直に謝った。
その様子に千歳は苦笑しながら、カウンターの中に入る。

「何か飲む?」

「あ、じゃあ、アールグレイを…」

優しげな声につられ、花園は答えた。

「懐かしいね、アールグレイか〜生徒会のお茶会でよく花園に入れてもらったよね」

「うん…」

「人に入れてもらうと、お茶って倍おいしんだよね」

「…それがこの仕事についた理由?」

「まぁ、色々と…」

紅茶が出されると、花園はカップを見つめて黙り込んだ。
元の席に戻った千歳も同じ紅茶を一口飲むと、口を開いた。

「…返事だったっけ」

千歳はそう言うと、花園の方は見ずに答えた。

「結婚は出来ないよ…答えはNOです」

「そっ…かぁ~」

花園は両手で持ったカップに目を落としたまま呟いた。

「でも、ありがとう…花園、私は大丈夫だから…」

その一言を聞いて花園は、千歳の方を見た。
目が合うと、花園は今にも泣き出しそうな顔をして千歳を見ている。

「もう、いいから…」

そう言うと、千歳は花園を抱きしめた。