ピピピッピピピッ


「んっ…。んー!」バン!

目覚まし時計を強く叩きすぎた…。

目を覚まし起きると、目の前には天使の笑顔がっ!か、可愛すぎる!

私は可愛いものは何でも好きだ。
よくお眠りになられていることだ。

「お風呂入ろう。」

今は10時。今日は詩織のお金を取り戻すため学校は休んだ。

お風呂に入り、下着姿で部屋に戻ると詩織が起きていた。が、ものすごくオドオドしている。

「詩織?どうした?」

「玲菜ちゃんー!玲菜ちゃんがいなくて、怖かった。」

昨日のこと、まだ吹っ切れていなかったんだな。

「そうか。それはごめん。お風呂に入ってこい。」

「う、うん…。」

「あっ!詩織って、何カップだ?」

「な、なんで?!」

私が普通に聞くと、顔を真っ赤にさせて慌てだした。なんつー純粋さ…。

「着替えだ。下着とかの。」

「あ、あぁ。Cカップだよ?」

「そうか。わかった。」

詩織が風呂場に向かった瞬間動揺した。
そのサイズのブラを持ってねぇ!

私はEカップだからまず無い!買いに行かないと。

もう、お店は開いているな。

ガラガラガラッ!

「詩織ー!」

脱衣所のドアを開けて、お風呂場に向かって叫ぶ。

「なぁーにー?」

「ちょっと買い物行ってくるなぁ!」

「え?!私も行きたい!」

「え?!あ、あぁ!わかった!とりあえず今日の詩織の服買ってくる!」

「わかった!」

まさか、一緒に行きたいというとは。

とりあえず急ごう。

近くにある、洋服専門店や下着専門店に行って詩織に似合いそうな服を数着買って家に戻る。

こんなことなら、体のサイズだけじゃなくバストも測っておくんだったと今更後悔。

「ただいま。詩織ー!服置いておくぞ!」

「うん!ありがとう!」

ガラガラッ!勢いよく扉が開き、詩織が飛び出してきた。

「ねぇ、玲菜ちゃん!この下着カワイイよー!玲菜ちゃんセンスいい!」

そう言いながら下着姿で出てきた。桜色がベースになった白色のボーダーの下着のセット。確かに似合ってはいるが…

「服を着なさい!風邪ひくぞ。」

「はぁーい。」

詩織は脱衣所に戻っていった。

はぁ、異常になつかれた気がする。

「玲菜ちゃん。この服どお?」

詩織が着てきた服は私が買ってきた白のワンピースだった。

膝上あたりの長さですごく清楚な服だ。

「それだけ?カーディガンも買ってあったはずだけど…?」

「え?これしかなかったよ?」

あれ?買わなかったっけ?

「ほら!ないよ?」

私が渡した袋を持ってきて言った。

「そっか。私の着る?少し大きいかもしれないけど。」

クローゼットを開けてレモン色のカーディガンを渡した。

「来てみな。」

「着たよ!でも、少し大きいね…。ふふ」

だろうな。私は160㎝で、詩織は150㎝ちょっと。

「まぁ、可愛いし良いんじゃないか?」

「そう?ありがとう!
玲菜ちゃんはどんな服着るの?」

「んー?これだけど?」

ハンガーにかけてあった服を見せた。

「カッコいい!私とは真逆の服だね!」

例えば、詩織は清楚系で私はストリート系と言うべきか。

詩織は、白のワンピースに黄色のカーディガン、桜色のヒール。
なのに対して、
私は黒の短パンに白の半袖ロゴT、黒のスニーカー。

その服に着替えて、服装に合うメイクを軽くした。

「詩織、ちょっと来て。」

「なにー?」

「座って。」

詩織にも服装に合わせて軽くメイクをした。

「じゃあ、行こうか。」

「うん!」

初めに詩織の家へ向かった。

親戚は詩織が帰ってきた瞬間に目の色を変え、迫ってきた。

「今日は、お話がございます。」

詩織の言葉に誰もがお金の話と思い、一瞬にして静まった。

「私は、誰のお家にもお世話になる気はございません。
私の隣にいる方にお世話になります。」

詩織の言葉に親戚一同血相を変えて怒った。

“優しくしてやったのに”とか“金はどうなるんだ”とか我が保身のため、金のため。
これが親戚か…。

「うっせーな!金のことしか頭にねー奴が人を幸せにできるわけねーだろう‼」

その場はシーンと静まり返った。キレてしまった。
最近、短気になった気がする。

「お金も会社も全て詩織のもんだ。そうだろう?秘書さん」

私の問いに丁寧に答えてくれた。

「はい。全て詩織さんのものです。会社は潰そうが何しようと詩織さんの自由となります。」

その言葉で、親戚の人たちは帰って行った。
詩織は会社を残すと決めていたらしく、会社を継ぐらしい。
秘書さんはまだ、会社に居ていいと詩織が言った。もし、新しい仕事場を探すなら全然いいし、会社にずっと残っても良いと。

「今まで、お母さんを支えてくださってありがとうございます。これからは、私たちの秘書としてお願いします!」

詩織は会社に残りたいと言った秘書さんにお礼を言った。

でも、一つ疑問がある。

「“私たち”ってなに?私も入ってるの?」

「うん!もちろん!社長は玲菜ちゃんで私が副社長!」

この子は馬鹿だ。

「はぁ、私は来月くらいには死ぬんだぞ?」

「死なせない。ずっと一緒に居てもらう!」

「気持ちだけね。ほら、買い物行こう。」

「うん!」

生きれるなら生きたい。詩織のためにも。

でも、命の限界を日々感じざるおえない。日に日に悪くなってる。

だから、私は今を楽しむ!

お金は現金でもらうことになった。私の家の金庫に私のお金と一緒にしまうことにしたのだ。

「玲菜ちゃん!服見に行こう!」

「あぁ。」

この笑顔ももう少しで見れなくなるんだな。初めてだ。死ぬのが怖いと思ったのは…。

今は、今を楽しもう。


詩織はたくさん服を買って、アクセサリーも買って色々買っていた。

「玲菜ちゃん。おそろいのネックレス買おう?」

「あぁ。分かった。買うならいいのを買おう。」

また、可愛い笑顔にやられておそろいをすることになった。
せっかくお揃いで買うなら、長持ちのするいいモノを買った方がいいと思い、専門店に行った。

私がよくピアスを買うところだ。信用できる。

「いらっしゃいませ」

お店に入ると店員さんの声が聞こえてきた。

「あら!玲菜じゃない!お久しぶりねぇ。」

お店の奥から社長の“関谷 安佳里”(せきや あかり)さんが出てきた。

「安佳里さんご無沙汰しております。」

「今日は、どんなピアスを作りに来たの?」

「いえ。今日はピアスではなくペアのネックレスを」

「後ろの子と?」

「はい。妹のような感じです。笑」

「あらそうなの?おほほ
お名前はなんていうのかしら?」

安佳里さんは詩織に興味を持ったのか目がギラギラとしている。

「や、山口詩織です!よ、よろしくお願いします!」

「おほほ!面白い子ね!詩織ちゃんね!よろしく。私のことは安佳里さんって呼んでね。」

「はい!」

「で?どんなネックレスにしたいのかしら?」

どんなネックレスが良いのだろう。
私にも詩織にも似合うネックレス…。

「うーん。これと言ってないんですよ。」

「あら、やっぱりノープランなのね!」

「はい。いつもすみません。」

「じゃあ、こんなのはどう?これは誰にも勧めたことのない特注品。」

渡された紙に載っていたのは社長のデッサンだった。
リングとリングがつながっている。

「すごい。きれいだな。」

「でしょ?まぁ、お値段はお高くなるけどこの世に一つしかない。
私のデザインよ。色は自由でいいわ。文字も彫れるわよ。どう?」

「詩織。これ、どうだ?」

「わぁ!カワイイ…。これが良い!」

「じゃあ、決定ね!各自、彫りたい文字とネックレスの色を決めるわよ。文字はお互いに相手のリングに彫るからね。」

「じゃ、先に詩織でいい。
安佳里さん話があるんでどこか開いている部屋ありますか。」

詩織を先に行かして社長に聞いた。

「あら?どんな話かしら?」

「ピアスの話」

「わかったわ。私の部屋で聞くわ。」

安佳里さんの社長室に入ってすぐ話を切り出した。

「安佳里さん。ピアスを作ってほしいんです。詩織の誕生日まで私は生きられない。詩織の誕生日は9月なんです。」

「貴方の寿命はもうそんなにないの?」

私は頷くことしかできなかった。

「ネックレスの件とピアスの件急がせるわ。他にも注文待ちお客様はいるけどみんな貴方のことは分かってくれるわ。」

「ありがとう。安佳里さん。」

「ピアスのデザインはどうするの?」

「もう決まってるんです。」

「あら、初めてのことね。いつもノープランなのに。」

「あはは、すいません。
デザインを描いてもらってもいいですか?」

「いいわよ。」

そう言うと、ペンと紙を取り出し構えた。

「色は誕生石のサファイヤ、形は……。星型。」

言い終わった後、安佳里さんは目を見開いた。

「貴方…!その言葉は!」

「うん。青星の話だろう?」

昔、安佳里さんに言ったことがあった。

““もし、死ぬまでに命に代えても守りたいと思う友達ができたら、絶対に渡したい言葉があるんだ。
『青星』って言って、太陽を除けば地球上から見て最も輝いている恒星なんだ。
私の選んだ友達は最高に輝いているって意味なんだよ。””

「もう先が長くないからさ、私の全てを詩織にあげるつもり。
そのくらい大事な子。」

「そうか。わかった。ネックレスの色と、言葉はどうする?」

「色は、シルバー。詩織のネックレスに入れる言葉は…。

From"R"
I'm with you, always
(僕がついてる。いつも。)

これでお願いします。」

「わかった。ピアスとネックレスは、どんなに急いでも一週間はかかる。まぁ、特注品だから。全部現金払いでいいわよね。」

「もちろん。来週取りに来る。あとで払う」

「詩織ちゃんが待ってるわよ。」

「はい。では、お願いします。」

社長室を出て詩織のもとに向かった。

「詩織!終わったか?」

「うん!」

「スーパー行くぞー。」

「はぁーい!」


『何を考えているのか知らないけど、焦りすぎよ。玲菜
貴方はなんでも一人で抱え込みすぎなのよ。まだ希望はあるはずよ。』

安佳里が密かにそう思っているとは知らぬ玲菜であった。