朝8時に自然に目が覚めた。

今日が、計画実行日。そして…何もかもなくなる。

8時30分に家を出て、水神の倉庫に向かった。

計画が終われば、最悪の死を待つだけの入院が待っている。

私の計画の内容はこうだ。

      ↓

現姫の美希ちゃんを裏切り者に仕立て上げる。でも、水神は美希ちゃんを信じるだろう。
そうして、私はみんなに嫌われる。
ただそれだけだ。昨日のけがもそのためにのものだ。


もう、体の自由が利きにくくなっている。
もう、そろそろ危うい。

倉庫に着き、中に入った。

朝が早いせいか、下っ端の人たちが寝ていたりいない人が多かったからか、いつもより幹部室に着くのが早い気がした。

「あ、あの…。」

部屋に入ってすぐ、声をかけた。
幸い、美希ちゃんは居なかった。

「お話とは何ですか?」

旬が聞いてきた。

「あの、実は美希ちゃんのことで…。」

「美希がなんだ?」

私の言葉に続いて、雅也が聞いてきた。

「私、言おうか迷ったんだけど…。
昨日美希ちゃんが男の人たちを使って、私をケガさせたの。」

「はぁ?美希がそんなことするはずないだろう?!」

雅也が反抗した。

「怜奈。大丈夫か?けがの手当てをしよう。」

旬が私のけがの手当てをしてくれた。

「旬、ありがとう。
雅也の言う通りかもしれない。もしかしたら、私のか違いだったかもしれない。
でも、赤いリボンをつけていたからそうだと思ったんだけど…。」

「赤いリボン…。あっ!」

雅也が反応した。
それもそのはず、赤いリボンは昨日美希ちゃんがつけていたから私には知るはずもないもんね。
まぁ、学校から出ようとしたら美希ちゃんを見かけたから知っている。

ガチャッ!

「みんなー!ヤッホー…!
…。どうしたの?怜奈ちゃん!」

突然美希ちゃんが入ってきた。
手当てをされている私を見て驚いている。

「どうしたの?って、美希ちゃんが男の人たちにさせたんでしょ?!」

「え?私そんなことしてない!」

「う、嘘つかないで!」

「なぁ、美希。裏切ってないよな?」

雅也が美希ちゃんに聞いた。

「私じゃない!」

「でも、美希ちゃん私に言ったよね?
姫は私だけでいいの!水神にもう、関わらないで!そう言ったよね?!」

「言ってないよ!みんな信じてよ!」

「美希、もう一度聞く。裏切ったのか?!」

雅也が、力強く聞いた。

「私は裏切ってない‼」

美希ちゃんも力強く言い返した。
これは、もう信じるだろうな。

「そうか。俺は信じる。」

雅也は信じた。

「はぁ、もういい加減にしなよ。玲菜ちゃん」

「「「「玲菜ちゃん?!」」」」

葵衣の言葉にみんなが叫ぶ。

「どういうことだ?怜奈。」

一番初めに聞いてきたのは龍生だった。

「ごめんね。龍生
玲菜は私の本名。桜木怜奈は偽名で、本名は松井玲菜よ。」

「どういうこと?怜奈ちゃん
私いじめてないよね?どうしてうそをついたの?」

美希は悲しそうな、でも怒りを含めた声で強く言った。

「どうして?そんなの決まってるでしょ?
姫になりたかったの!フフフ
ごめんね?みんな」

私が軽く言うと、

「はぁ?!ふざけんなよ!
心配したこっちの気持ちも考えろよ!」

雅也が激怒した。

「あんた、ふざけんのも大概にしろよな。」

私の手当てをしていた旬も、静かにキレた。

「はいはい。すいませんでしたー!私は姫になりたかっただけよ。
じゃあ、もうここには一生来ることはないけど…。
じゃあねー!」

そう言って、足早に倉庫を去ろうとした。
倉庫を出たあたりで誰かに肩を掴まれた。

「な、なに?!」

叫んで、後ろを振り返るとそこにいたのは葵衣だった。

「なに?葵衣」

「玲菜ちゃんは、嘘つくの下手になったね。」

「はぁ?なんのことよ。」

「姫のこと。なろうと思えばなれたでしょ?
俺が姫にならないかって言ったとき、断ったのは玲菜でしょ?」

「あぁ、確かに。まぁ、いいじゃん。なんでも。」

「俺には教えてよ。」

「簡潔でよければ。」

「理解ができれば何でも」

早く、孝介先生のところに行かないといけないのに。

「入院しないといけなくなったの。だからよ。」

「あぁ。それで…!ねぇ、君って“鬼”だよね?」

バレてんじゃん。ハッキングしやがったな。

「そうだけど?あっ、詩織のこと頼んだよ。もし、何かあったら連絡して。」

「ハイハイ。分かってるよ。」

「あっ、あと。この手紙を美希ちゃんに渡して。
で、この袋を詩織に渡して。もう少しで来るはずだから。
龍生たちに全部話してもいいよ。じゃあね。」

「わかった。」

急いで、孝介先生のもとに行き車に乗り込んだ。

「ちょっと本気でやばいかも。」

「どんな状態だ。」

「呼吸がしづらいのはいつものことだけど、歩くのにも疲労を感じてる。何をするのも辛い。」

「そうか、相当進行しているな。病院に戻ったら検査だ。」

「うん。分かってるよ。」

この日から、退屈な退屈な恐怖の死を待つだけの入院生活が始まった。