計画の準備を終えて、学校に向かった。

今は授業中だから、誰にも会うことはないだろうから人目を気にしなくていい。

職員室前に着いた。

コンコンッ

「失礼します。」

「どうかしたの?昨日は大丈夫だった?」

クラスの担任が目の前に来た。

「はい。迷惑をおかけしてすみませんでした。」

「迷惑なんて!」

「実は、大切なお話があってきました。
昨日の時点で察してらしたかもしれませんが、日常生活が危うくなってきました。
明日、入院することにしました。今日を持って、学校を退学します。」

「そっか。私は、少しでも長くあなたが生きていられることを祈ってます。」

「はい。ありがとうございます。
あの、病気の件もも退学の件もクラスの人たちへの報告は先生に任せます。でも、明後日まで誰にも言わないでください。お願いします。」

「明後日まで…?何か、理由があるのね。
分かったわ。明後日みんなに全てはなさしてもらうわ。」

「なにも、挨拶できず申し訳ございません。
他の先生方にもお礼を言えていないので、申し訳ないのですが、先生方に伝言をお願いします。」

「え、ええ。ちょっと待って、録音機持ってくるわ。」

そう言って、自分のデスクに録音機を取りに行き、戻ってきた。

「はい。いいわよ。」


『“先生方、直接言えなくて声のみになってしまい、申し訳ございません。
私は今、日常生活が送れないくらい危うい状態です。
もう、入院をしなければならなくなってしまいました。
このような形で報告してしまってすいません。
こんな私を学校に受け入れてくださって、ありがとうございます。
先生方には感謝してもしきれません。ありがとうございました。
もっと、この学校で先生方の授業を受けたかったです。
もう、会えないかもしれませんが、会ったときは声をかけてください。
本当にありがとうございました!

・・・・・・

先生、全部言い終わりました。”』

「言い残すことはもうない?」

「はい。ありがとうございました。
本当に最後ですね。それでは、失礼します。」

「頑張ってね。」

「はい。」

お辞儀をして、学校を去った。

家に帰り、葵衣に電話をした。

プルプルップルプルッ

「もしもし、なにー?」

葵衣ののんきな声が聞こえてきた。

「あのさ、明日の朝9時に話があるの。
幹部みんな集めておいてほしい。」

「話ってなにー?」

「明日の朝言うわ。」

「そっかー。じゃあ、明日ねー。」

「うん。」

プチッ


これで、最高で最悪の死の舞台が完成した。あとは明日、仕上げをするだけだ。

今日はまだやることが残っている。

“鬼”としてではなく、1人の女として喧嘩をしに行くのだ。

7時まで待って繁華街に向かう。

今は、体自体が弱ってしまっている。もしかすると、犯されるかもしれない。それほどの覚悟。

歩くだけでも疲労を感じる。

繁華街に着き、いきなり絡まれてしまった。

「おい、そこのねぇーちゃん。
ここに来たってことはヤられに来たってことだよなぁ?」

ニヤニヤしながら男3人が向かってくる。気持ちの悪い奴ら…。

「いいよ。やろうよ。」

「ハハハ、そうか!それじゃあ遠慮なく!」

その声とともに、3人一斉にかかってくる。

ヒュッ!バキッン‼

2人を避け、後ろの1人の顔面にパンチをくらわした。

「う”ぅ”…。」

バキッ!

もう1人を殴る。だが、

バコッ!

私の頭を鉄パイプで殴ってきた。振り向くと、最初に殴った男が後ろにいた。

「調子に乗りやがって!」

その男に気を取られていると、ガシッ!っと、もう一人の男に羽交い絞めされ、身動きが取れなくなってしまった。

まぁ、今日の本来の目的は殴られること。

理由は、明日分かるよ!

でも、これはやばい。

バコッ!ボコッ!

鉄パイプで殴られまくっていると、もう一人が起きた。

「イッテェー。このクソ女…。」

バコッ!

顔面殴られたんですけどー!いや、いいけど痛いよ!

ダメだ。このままだと気絶しちゃう。

いい加減反撃しないと…。

グリッ!

羽交い絞めしている男のみぞおちを肘でえぐった。

声にならないうめき声をあげながら、倒れた。

前の男に回し蹴りをして2人同時に吹っ飛ばした。

帰ろう。これはさすがにやられすぎた。

家に帰ると、すでに詩織が帰っていた。

何もなかったかのように装った。

「ただいま。」

「玲菜ちゃん!おかえり。ご飯作ったよ!」

詩織がエプロン姿でお出迎えしてくれた。

「そのエプロン似合ってるな。」

「そう?!ありがとう!美希ちゃんがプレゼントしてくれたの。」

「そっか。よかったな。」

「お鍋作ったの!簡単なもしか作れないから!」

「そうか。詩織が作ったのなら食べよう。」

「本当?やったー。」

リビングにはお鍋が置いてあった。
「「いただきます(!)」」

「うん。おいしいな、上出来だ。」

「やった!玲菜ちゃんに褒められた!」

詩織とはもう、一緒に居れないな。今日で最後か…。

「詩織、今日は水神の倉庫に行ったのか?」

「行ったよ!でも、すぐに帰ってきたの。
玲菜ちゃんが帰っているかもしれないと思って‼」

「1人で帰ってきてないよな?」

「うん!送ってもらったよ!」

「そうか。あっ、明日も水神の倉庫に行くよな?」

「うん!行くよ。」

「明日、みんなに話があるから、昼から来てくれないか?」

「え?話?」

「あぁ。大事な話だ。」

「そっか。分かった!」

「じゃあ、もう寝ようか。」

「うん!」

明日の朝、すべてのけりが付く…。

計画実行は明日の朝だ。