……ああなんかこういうの、恋人っぽい。
すごい、本当に彼氏なんだ。
なんだか今更実感がじわじわと湧いてくる。
「じゃ、帰ろっか」
「あ、はいっ…」
ついつい敬語になっちゃうのは直らないかもしれない。
だって私にとっては神の領域にいた人だったんだもん……。
まだふわふわとした感覚が抜けないまま、2人で並んで靴を履き替えて、2人で並んで家まで歩く。
「桃杏の家どこ」
「桜岡駅です。佐伯くんは?」
「南桜岡」
「じゃあ私の1つ後の駅なんですね」
こんな他愛もない話が出来るようになるなんて、思いもしなかったのに。

