髪が少し頬に触れる程風が吹いたのは
門倉が小走りで私の横を通り過ぎたからだった。




声変わりしたてのかすれ声が
背中越しから楽しげに聴こえる。



恥ずかしくて振り向けないや。


気合い入れてオシャレしたけど
自分の期待度が
こんなにも高かったのに
今、気付かされた。



多分、いつもだったら

オシャレなんかしちゃってさ〜
とか、からかわれて

別にしてないし!
とか、私も言っちゃって…

でも、いつもと雰囲気が違うんだな。
とか、内心思っちゃってる⁈
なんてワクワクして…


あーぁ、これ
私のただの妄想だわ。



『舞花、あっち行こ』

舞花のかき氷が私の手にかかるくらい
少し強引に腕を引いた。




なによ。


よっ!とか、さ。
せめて挨拶くらいしてくれてもいいじゃん。


なんて思ったけど

家に着いた頃には、
自分もあの場で挨拶くらいしとけば
今とは違う状況だったのに。
と後悔した。