「一杯だけ!飲み行かない…??」

19歳の春。
アタシは街中の居酒屋でバイトしていた。
デザイン学校に通いながら学校帰り、土日
暇な日は毎日バイトのシフトを詰め込んで。

しょっちゅうアタシと2人で店を回す店長は
よく仕事終わりに飲みに行こうと
私を誘っては朝日が昇るまで飲み明かした。


「財布だけ持ってこ。
店あとでもっかい寄ろ。あ、あとタバコ買ってかなきゃ。」

茶色の髪を無造作にセットして
耳にはいかついピアス、
袖をまくれば腕にぎっしりタトゥーの
入った店長は年によらず見た目は若い。


「丈さん今日どこ行く?」

店長の名前は相楽 丈。
36歳のおじさんには見えない
そこらへんにいるアタシの友達より
ちょっと大人びて見えるくらい本当に若く見える。
うちの店は店長のことを誰も店長とは言わず
みんな丈さん丈さんと呼ぶ。
だから丈さんもアタシ達バイトのことを
みんな名前で呼ぶ。