「あんなに小さかった雪がこんなに立派な女性に成長するなんてあの時は考えられなかったな」



「時々男らしくもなるけどな」




そんな土方の茶々に近藤は嫌な顔一つせずにハハッと笑った。



それは近藤にも思い当たる節があるからだ。




「おや、二人してどうしたんです」




近藤の笑い声に気付いた山南が不思議そうに雪の部屋を訪れた。



「山南君か。今雪が初めて試衛館に来た日の事を話していたんだ」



「そうだったんですか」と山南は雪の寝顔を見ながら穏やかに微笑んだ。




「こいつには江戸で女として幸せになって貰いたかったんだがな」




げんなりと言う土方に山南はふと一年前に雪が言っていた事を思い出した。




「そう言えば昨年私が同じ事を雪に言った時、『人にはそれぞれ違った幸せの形があり、所帯を持つ事で私は幸せになれない』と口にしていた事を思い出しました」