「屯所移転?」


隊士達が増えて屯所が手狭になった今、新撰組では屯所移転の噂が流れていた。


ただそれだけなら良かったものの、移転について土方と山南が揉めているらしく、異例な光景に屯所内は殺伐としていた。


それもそうだ。


なんたってあの穏やかな山南さんが渦中の存在なのだから。


屯所移転については全員が賛成しているようだが土方が候補に挙げた西本願寺を山南が反対しているらしい。


「ここ最近の山南さんの様子がおかしいから少し心配なんだ」


団子を片手に本当に心配しているのか疑いたくなる総司の話を聞きながら私も冷えた体を温めてくれるお汁粉を食べる。


確かにここ数日、山南さんは部屋に篭りっぱなしで食事もまともに取っていない。



山南を頭の片隅に留めておきながら甘味を食べ終えた私達は夕餉の買い出しに出た。



「雪、今日の夕餉は何?」

「そうねえ…この時期は秋刀魚が安いから秋刀魚にしようかな。それからお芋を…」


「雪?」


途中で言葉を止めた雪の視線を辿ると綺麗な女性と仲睦まじく逢瀬をしている山南が目に入った。