「ま、まあまあまあ、仲良く食べよーよっ」


あはは、なんて笑いながらこの2人をなだめるのは私の仕事。舞と郁也は目線を合わせてバチバチと火花を散らしている。


郁也とちゃんと付き合うようになったのはいいものの、このウソつき王子とにかく何処へでもついてくる。

授業中はもちろん隣の席、昼休みに放課後、掃除の時間まで。まわりにはあの西条郁也がどうしたんだと言われる始末。

周りには王子様キャラを貫いているけれど、なんと舞の前では裏の顔をこうやってバリバリ見せているのも大問題だ。まあ、舞は『元から西条郁也って胡散臭いと思ってたのよね』と言って何も不思議がっていないんだけど。


でも、嬉しいな。


心友と、すきな人と、こうやって一緒にいられるんだもん。


「……ふふふっ」

「林檎、なに一人で笑ってんの?キモい」

「えっ?!?!!!」



舞の冷めた目線が鋭いのは変わらないけどね!



「あ、そうだ!舞、今日私委員会遅くなるから先に帰っててね」

「ああ、別に待っててもいいけど……」


舞が私から視線を外した。


「その隣の男が待ちたそうだから今回は譲ってあげる」


私が横を向くと、郁也はプイッとそっぽを向く。


「うるせえ」

「何よ、ほんとのことでしょ?」

「……待つに決まってんだろ、彼氏なんだから」



その言葉に、私は一気に顔が赤くなった。

郁也はすぐにこうやってドキドキさせてくるからずるい。私は恋愛偏差値25のオンナだってのに。


「あー、暑い、暑苦しい!」


舞がパタパタと手で仰ぐそぶりをする。郁也がまた睨みを利かせているけど、私はそんな2人がほんとうは嫌い同士じゃないことわかってるんだ。