「ホント、ずりいな、林檎は」

「きゃっ」


いきなり郁也が顔を上げて私の手を取った。そのまま強引に引き寄せられて、顔を郁也の胸に押し付けられる。

そして、私の頭に郁也の顎が乗る。

これじゃ顔、見れないのに。……すぐそばにある鼓動とあたたかさが伝わって、どうしようもなく、うれしい。


「仕返し」

「……バカ」

「好きだ、林檎。もう離さねぇ」

「イキナリ?!」

「思ったことそのまま言っただけだろ」

「もう……!」


多分この一瞬が、私の人生で一番幸せな時かもしれない、なんて思ったわたしは、多分思っている以上に郁也のことが好きなんだろう。