5分前に集合場所に到着していた私とは反対に、彼は30分も遅れてその場所へやってきた。その時点ですでにおかしいと思えばよかったものの、その時の私は本当に考えなしのバカだった。


『ゴメン! 』


遅れた理由もなくそう言って手を合わせた彼に、私は笑顔で『大丈夫だよ』って返す。その言葉に安心したのか、彼はすんなり私の手を引いて歩き出した。


『よかった。おれ、行きたいところあるんだけどいい?』

『え、ご飯……行くんだよね?』

『あー、うん。その前に、ちょっと』


言葉を濁した彼は優しく笑って、でも強引に掴まれた手は少しだけ痛かった。まるで私がどこにもいかないようにしているみたいだった。

いつもみたいに世間話をして街を歩く。けれど、だんだん人通りが少ない道になってきて、いよいよおかしいなって思い始めた時には遅かった。


『お、キタキタ』


気持ち悪いくらいニタリと口角を上げた高校生くらいの男の人がふたり、人気のない裏道からヒョッコリ顔を出したんだ。

彼はその人たちに手を振って、『遅れてゴメン』なんて言っている。

怖くなって手を離そうとしても、力が強くて全然離れようとしなかった。