「ちょ、郁也、やめ、」
「……今のは完全おまえが悪いよな?
俺とキスとかそれ以上シたのかって……そう聞かれて、したくないって答える彼女がどこにいんだよ」
郁也はそう言って口角をあげる。面白がっている時の顔だ。からかってるに違いない。でもこんなの悪質だ。バカヤロウふざけるな。二度も大事な唇を奪われてたまるもんか。
「当たり前でしょっ……郁也はただの、ゲームなんだからっ……」
「ふうん、ゲーム、ね……」
「なに、あんたがそう言ったんでしょーが」
「……この間は俺のキスに感じてたくせに」
恥ずかしげもなくそんなことを言うのは全人類の中でコイツだけだと思う。私はあの時のことを思い出して恥ずかしさがこみ上げた。
「ち、ちが……っ!だいたい、あれは勝手に郁也がっ…」
「俺のキス、よかったろ?」
「はあ、なに言ってっ…」
「もう俺以外なんかとしたくねえって思わせてやるよ、ホラ、目え閉じろ」
離してもらおうと抵抗してみるも、案外強い郁也の力に勝てるはずもなかった。男の子なんだと、今更ながらに実感して。心なしか少し震えて、涙も目に溜まっている気がする。
「い、郁也…やめて……?」
「………ソレ、逆効果」
郁也の顔がふっと近づく。背けようとしても無理だった。私の唇に、同じものが重なった。
ふさがれた唇に、動けない全身。ペロリと私の下唇を舐めあげた後、固く閉じた私の唇をこじ開けて侵入してきた舌が口内を暴れて、まるで食べられているみたいだと思う。
バカ、私のバカ。
拒まなきゃいけないのに、力はどんどんと抜けていく。頭がクラクラして、郁也のことしか考えられない。
「いく、や、やめ」
「しゃべんな、もっと味わせろ」
まだ、人生で二回目なのに。こんなに深いキス知らないよ。郁也のカッターシャツをぎゅっと握りしめた。