「はぐらかさなくてもいいじゃん!
ねえ、やっぱり上手いの? キスとか!」
「さ……さぁ……」
この人の名前なんだったかな。確か山路さんだよね。初めてしゃべったのに、山路さんって変わった人だ。
もしかして郁也のこと好きなのかな。こんなに堂々と昼間っからそんな事聞かなくてもいいのに…。
「まだシてないわけないでしょっ?」
「シ、シてないって何を……」
「キス……より先のこととかっー!」
ボッと顔が赤くなる。
やややや、山路さんって、オープン? この手の話になった途端みんな食いつき始めるしやめて欲しい。本気でやめて欲しい。
「なに赤くなってるの?!
林檎ちゃんってかわいいー!」
「だだ、だって……」
「そんなの今時普通だよっ?」
ふ、普通なのか……私はどうやら女子高生という時代についていけていないらしい。
てか、郁也とは何にもしてな……いこともないげとも!! あの日のキスは、思い出すだけで恥ずかしい。
第一、私と郁也の関係は"賭け"の中で成立してるだけであって。そもそもキスだとかそんなものをする関係なんかじゃないのだ。
ああでも、確かに郁也、キス上手かったな……。ていうか、慣れてた。当たり前だけど、あいつはそういうの、誰にでもできるんだ。