『ねーえ、西条クン…早く続きして…?』


女の声が耳ざわりで、一瞬眉間にしわが寄ったと思う。俺はあの時、走り去っていく朝日林檎の背中を見てた。俺から逃げた、あの子の背中を。


『ねえ、西条クンでばあ…』

『ああ…』


後ろを振り返る。確かに美人だ。キスも上手かった。スタイルもいい。抱くのには申し分のない相手だろう。

…だけど。


『ごめん、もうキミに興味ないや』


俺の外見だけが欲しい奴は、もううんざりだ。

美人な先輩の顔がみるみる青ざめていく。なんで?って言ったのが聞こえたけれど、俺は振り返らず教室を出る。


王子様キャラってのは案外楽じゃない。

でも、周りは俺の外見だけを見て勝手にそう決めつける。まあ、それに乗っかってる俺が1番最低なんだけど。