「……何言ってんの?」
舞がニラんでる! 恐らく私の後ろにいる西条郁也をすごい目つきでニラんでる!
私は固まって動けない。
ていうか西条郁也が何を考えているのか全くもって理解できない。
「だからね、林檎チャンは俺の彼女なの」
そう言った瞬間、ギャラリーからすごい声があがった。私の心の中も悲鳴をあげた。
何言ってくれちゃってんだよコノヤロウ……!
「嘘?!」とか
「マジで?!」とか
「超ショック―っ」とか
……いや、それホント私の心の中の声と同じなんです、みなさん騙されないで。
「……ホントなの?林檎」
「いや、ちがっ…」
「林檎ちゃん恥ずかしがり屋だから隠したいんだよね? でも俺にはそんなこと無理だったよー。さ、一緒に帰ろ?」
よくもまぁこんな嘘をぬけぬけと!
西条郁也が私の口を塞いだせいで、声に出そうとした音はすべてモゴモゴと消え去ってしまう。
西条郁也恐ろしすぎる……!
「じゃあ、そゆことだからさ、今日借りるね」
そう言い終わらないうちに西条郁也は私の手を引いて走り出した。瞬殺王子スマイルを振りまいて。
……こいつ、他の人の前ではあくまでも王子様風を貫き通すつもりらしい。
すんなりと繋がれた手に、心臓が鳴ってるのはきっと私だけなんだから、こんな風にドキドキするのは間違ってる。
……本当に、イミワカンナイ!