「じゃ、入学祝ってことでケーキ屋めぐりでもするー?」
舞が笑顔でそう言う。私たちは2人とも甘いモノが大好き。時々こうやって市内のケーキ屋さんを渡り歩いているんだ。
「いーくー! 舞とケーキ屋巡り久しぶりだね!」
アイツがいないことに調子に乗って、ひとまずあんな奴忘れようと思ったんだ。
うん。思ったはずなんだけど。
「……おーい、林檎チャン。彼氏さしおいて友達とデートなんて悲しいなー」
どこからともなく声がして、私はグイッと後ろにひっぱられた。
今の状況を理解するのに3秒。
え?
私まさか後ろから抱きしめられてる?
サーッと、自分の顔が青ざめていくのがわかった。だって、誰に、って、そんなの決まってる。
私は奴に抱きしめられたまま、目の前の舞の「は?」っていう顔と、周りの「えっ?」っていう反応を肌で感じ取った。
ジーザス。私の高校生活に終わりを告げる鐘が鳴り響いた気がします。